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【狭窄症の薬 A to Z】脊柱管狭窄症の処方薬[リマプロスト]は症状改善の有効率約80%で歩行障害・間欠性跛行に効果も

著者:アレックス脊椎クリニック院長 吉原 潔

「狭窄症の薬 A to Z」は、アレックス脊椎クリニック院長・吉原潔先生が、脊柱管狭窄症の治療で用いられる薬について解説する企画です。
今回は、「リマプロスト」について解説します。

脊柱管狭窄症で処方される薬については、以下の記事をご覧ください。
●薬物療法全般について
鎮痛薬だけでは痛みは取れない! 脊柱管狭窄症の薬物治療最前線
●トラマドールについて
【狭窄症の薬 A to Z】通常の鎮痛薬で効果が無い場合の選択肢[オピオイド系鎮痛薬・トラマドール]
●筋弛緩薬について
【狭窄症の薬 A to Z】筋肉のこわばりを和らげる[筋弛緩薬]は、鎮痛薬との併用で相乗効果が期待できる(チザニジンなど)
●鎮痛薬について その1 NSAIDs
【狭窄症の薬 A to Z】脊柱管狭窄症の悩ましい足腰の痛みを取り去る[鎮痛薬]非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)
●鎮痛薬について その2 アセトアミノフェン
【狭窄症の薬 A to Z】カゼ薬の成分として知られ安全性が高く副作用が少ない鎮痛薬[アセトアミノフェン]
●漢方薬について
脊柱管狭窄症の痛みやしびれの隠れた原因には漢方薬の検討も

リマプロストは鎮痛薬と併用するのが基本

リマプロスト(プロスタグランジンE1誘導体製剤・製品名はオパルモン、プロレナールなど)は、閉塞性血栓血管炎(手足の血管に血栓ができ、血管の内腔を塞ぐ病気)に対する治療薬として1988年から承認・発売されている薬です。
その後、腰部脊柱管狭窄症(以下、脊柱管狭窄症)に対する治療効果が認められて、薬物治療の処方薬の一つとして用いられるようになりました。
腰痛や下肢痛を訴える患者さんには、まず鎮痛薬が処方されることが多いです。薬物治療の基本的な情報は鎮痛薬だけでは痛みは取れない! 脊柱管狭窄症の薬物治療最前線でくわしく解説しています。
鎮痛薬と併せてリマプロストが処方されるのは、MRI(磁気共鳴断層撮影)の画像検査を行い、画像上で腰痛や下肢痛の原因が脊柱管の狭窄と認められた場合です。
高齢で、脊柱管狭窄症が強く疑われる場合には、最初から、鎮痛薬と併せてリマプロストを処方します。また、歩行障害・間欠性跛行(こま切れにしか歩けなくなる症状)を訴える患者さんには、リマプロストを第一選択薬として処方します。

リマプロストは毛細血管を広げ血流を改善する

リマプロストには、強力な「血管拡張作用」と「血流増加作用」があります。さらには「血小板凝集抑制作用」といって血液の粘度を下げて血流を改善させる働きがあります。
脊柱管狭窄症では、腰椎の神経が入っているトンネル(脊柱管)が狭くなるため、神経に十分に血液が行きわたらずに、腰痛や足のしびれといった症状が現れます。
そうした症状を示す患者さんにリマプロストを処方すると、脊柱管の狭窄によって圧迫された神経のまわりの血流が増加して、症状の改善を図ることができます。
「血液をサラサラにする薬」というよりは「毛細血管を拡張させて血のめぐりをよくする薬」といえます。ですから、ケガをしたときにリマプロストを服用すると血が止まらない、出血しやすくなる、というような副作用はないので、安心してください。

継続した服用で効果を実感できる

製薬会社の試験によると、リマプロストの有効率については、「著明に改善」と「改善」を足した割合は56%、「やや改善」を加えると80%近くになります。
一方、副作用の出現率は低くて、わずか4%ほど。まれに、下痢・吐きけ・ほてり・発疹・腹部の不快感があるくらいです。このように、ほとんど副作用らしい副作用がないのがこの薬のいいところです。
実際に私も、今までの25年間、リマプロストを処方してきましたが、大きな副作用を見たことはありません。ごくまれに「胃が痛くなる」「体がほてる」といわれたことがある程度です。
ただし、効果が強い薬というわけではないので、数日飲んでみただけでは、なかなか効果は実感できません。数週間続けて飲んでみて「前よりも少し改善したような気がする」という人は、薬が効いていると考えられるので、継続して内服することをおすすめします。継続的な服用で、実際に間欠性跛行などに顕著な効果が見られたこともあります(上の患者さんファイル①を参照)。

リマプロストの欠点は高額なこと

私は、患者さんに「まずは1~2ヵ月、飲んでみてください」といって処方しています。どんな薬にもいえることですが、飲んだり飲まなかったりと服薬状況が悪い人は効かない傾向があります(上の患者さんファイル②を参照)。
リマプロストの欠点をあげるとすれば、薬の価格がやや高いことでしょう。また、リマプロストは湿気に弱く、湿気を吸うと効果が低下してしまいます。そのため、先発品のリマプロストは、2006年、2014年と2回の製造方法の変更を行い、湿気に対する改善がなされています。
現在、ジェネリック医薬品のリマプロストも入手可能で、価格は先発品よりも安いのですが、湿気に対してどれくらいの安定性があるのか不明です。
そこで、飲みはじめは、多少高くても先発品で効果を試してみて、効果が認められるようならばジェネリック医薬品に変更し、経過を見るという服用方法をおすすめします。

脊柱管狭窄症で処方される薬については、以下の記事をご覧ください。

●薬物療法全般について
鎮痛薬だけでは痛みは取れない! 脊柱管狭窄症の薬物治療最前線
●トラマドールについて
【狭窄症の薬 A to Z】通常の鎮痛薬で効果が無い場合の選択肢[オピオイド系鎮痛薬・トラマドール]
●筋弛緩薬について
【狭窄症の薬 A to Z】筋肉のこわばりを和らげる[筋弛緩薬]は、鎮痛薬との併用で相乗効果が期待できる(チザニジンなど)
●鎮痛薬について その1 NSAIDs
【狭窄症の薬 A to Z】脊柱管狭窄症の悩ましい足腰の痛みを取り去る[鎮痛薬]非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)
●鎮痛薬について その2 アセトアミノフェン
【狭窄症の薬 A to Z】カゼ薬の成分として知られ安全性が高く副作用が少ない鎮痛薬[アセトアミノフェン]
●漢方薬について
脊柱管狭窄症の痛みやしびれの隠れた原因には漢方薬の検討も

・記事の内容は安全性に配慮して紹介していますが、万が一体調が悪化する場合はすぐに中止して専門医にご相談ください。
・医療機関にて適切な診断・治療を受けたうえで、セルフケアの一助となる参考情報として、ご自身の体調に応じてお役立てください。
・本サイトの記事は、医師や専門家の意見や見解であり、効果効能を保証するものでも、特定の治療法・ケア法だけを推奨するものでもありません。

出典

腰らく塾vol1_Medium.png●わかさ増刊号 脊柱管狭窄症克服マガジン「腰らく塾」 vol.1 2017年冬号
http://wks.jp/koshiraku001/
著者:吉原 潔

●脊柱管狭窄症をいちから知りたい方は、ぜひ下の記事をご覧ください。

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