【狭窄症の薬 A to Z】脊柱管狭窄症の新薬[プレガバリン]は神経ブロック注射が無効の人にも有効な第一選択薬|カラダネ

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【狭窄症の薬 A to Z】脊柱管狭窄症の新薬[プレガバリン]は神経ブロック注射が無効の人にも有効な第一選択薬

著者:アレックス脊椎クリニック院長 吉原潔

「狭窄症の薬 A to Z」は、アレックス脊椎クリニック院長・吉原潔先生が、脊柱管狭窄症の治療で用いられる薬について解説する企画です。
今回は、「プレガバリン」について解説します。

薬物治療の基本的な情報や、その他の脊柱管狭窄症で処方される薬については、以下の記事をご覧ください。
●薬物療法全般について
鎮痛薬だけでは痛みは取れない! 脊柱管狭窄症の薬物治療最前線
●リマプロストについて
【狭窄症の薬 A to Z】脊柱管狭窄症の処方薬[リマプロスト]は症状改善の有効率約80%で歩行障害・間欠性跛行に効果も
●トラマドールについて
【狭窄症の薬 A to Z】通常の鎮痛薬で効果が無い場合の選択肢[オピオイド系鎮痛薬・トラマドール]
●筋弛緩薬について
【狭窄症の薬 A to Z】筋肉のこわばりを和らげる[筋弛緩薬]は、鎮痛薬との併用で相乗効果が期待できる(チザニジンなど)
●鎮痛薬について その1 NSAIDs
【狭窄症の薬 A to Z】脊柱管狭窄症の悩ましい足腰の痛みを取り去る[鎮痛薬]非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)
●鎮痛薬について その2 アセトアミノフェン
【狭窄症の薬 A to Z】カゼ薬の成分として知られ安全性が高く副作用が少ない鎮痛薬[アセトアミノフェン]
●漢方薬について
脊柱管狭窄症の痛みやしびれの隠れた原因には漢方薬の検討も

ケガや病気が治っても痛みやしびれが取れない「神経障害性疼痛」

病気で神経が圧迫されたり、ケガで神経が傷ついたりすると、神経が異常に興奮して痛みが起こります。痛みの原因となったケガや病気が治っても、神経が興奮したままになっていると痛みが取れません。
このような状態を医学的には「神経障害性疼痛(とうつう)」といいます。ビリビリやジンジン、ズキズキと感じられる痛みは神経障害性疼痛の可能性があります。
腰部脊柱管狭窄症(以下、脊柱管狭窄症)で、多くの患者さんの悩みの種になっているのが腰・お尻から足にかけて起こる痛みやしびれです。これもまた神経障害性疼痛に分類されます。

プレガバリンは世界120ヵ国以上で広く認められている世界的な第一選択薬

こうした神経障害性疼痛の薬物療法で多く用いられているのが「プレガバリン(製品名は「リリカ」)」です。プレガバリンは世界120ヵ国以上の国と地域で有効性と安全性が認められ広く使われています。日本では、2010年から脊柱管狭窄症の治療薬として保険適用されました。
実際、痛み治療の世界標準となっている国際疼痛学会のガイドラインや、英国立医療技術評価機構、欧州神経学会、そして日本ペインクリニック学会のガイドラインなどでは、プレガバリンを、抗ウツ薬(三環系抗ウツ薬)などの薬とともに、神経障害性疼痛の第一選択薬として推奨すると記載されています。このことからもプレガバリンは大きな効果の期待できる薬であることがわかります。

プレガバリンの有効率は約83%と高い試験結果

プレガバリンが痛みに効果を発揮するメカニズムを説明しましょう。
私たちの体では、血管の中を血液が流れて赤血球が酸素を運んでいるように、神経の中も痛みなどの感覚を伝達する物質が流れており、その情報を脳に伝えています。そして、神経細胞間や、神経細胞とほかの細胞間で痛みを伝達するさいには、カルシウムイオンが関与していることがわかっています。
プレガバリンには、このカルシウムイオンが細胞に流入するのを低下させる作用があります。その結果、痛みのもととなる興奮性神経伝達物質の放出を抑えられて鎮痛作用を発揮すると考えられます。
製薬会社の試験によると、プレガバリンの有効率は83%と高い数値を示しています。これまで血管拡張薬や神経ブロック注射(脳への痛みの情報を遮断する治療法)などの治療の効果が得られず、脊柱管狭窄症の痛みに長年苦しんでいた患者さんが、この薬の登場によって救われたという例が数多く見られます。

プレガバリンの副作用と処方の基本

一方で、副作用の出現率は17%と低めで、依存性も少ないとされています。副作用が出やすいのは男性よりも女性で、年齢別では65歳以上の人に多く見られる傾向があります。
注意したいのが、初めて使用するときや使用量を増やしたときに副作用が出やすくなることです。副作用として多いのは、めまい・眠け・浮腫(体重増加)・便秘などです。
めまいや眠けについては、夕方または就寝前からの開始・増量によって気にならなくなります。むしろ、夜に服用すれば、ぐっすり眠れるという利点があります。
プレガバリンは、カプセル形状の薬剤で、内容量は25mg、75mg、150mgの三種類があります。飲みはじめの時期は、75mgを1カプセル飲むより、25mgを1カプセル、もしくは2カプセルと少量から開始して、飲む量を調節していけば、副作用の出現率を減らすことができます。
このように、最初は少量から始めて、効果と安全性のバランスを見ながら段階的に増量していくことが大切です。

実際の治療でもプレガバリンを活用して効果を実感

私自身も、脊柱管狭窄症による痛みやしびれの治療にプレガバリンを用いています。
例えば、脊柱管狭窄症で足腰の激しい痛みやしびれ、間欠性跛行(こま切れにしか歩けなくなる症状)に悩まされていた80代の女性は、消炎鎮痛薬などの薬と併せて、1ヵ月ほどプレガバリンを服用してもらったところ、症状が軽快し、歩くのもらくになりました。
また、脊柱管狭窄症による両足のしびれがつらくて来院した50代の男性にプレガバリンを処方したところ、一週間でしびれが完全に取れたという例もあります。
プレガバリンは、まだ比較的新しい薬のため、ジェネリック医薬品は今のところありません。

薬物治療の基本的な情報や、その他の脊柱管狭窄症で処方される薬については、以下の記事をご覧ください。
●薬物療法全般について
鎮痛薬だけでは痛みは取れない! 脊柱管狭窄症の薬物治療最前線
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●筋弛緩薬について
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●鎮痛薬について その1 NSAIDs
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●鎮痛薬について その2 アセトアミノフェン
【狭窄症の薬 A to Z】カゼ薬の成分として知られ安全性が高く副作用が少ない鎮痛薬[アセトアミノフェン]
●漢方薬について
脊柱管狭窄症の痛みやしびれの隠れた原因には漢方薬の検討も

・記事の内容は安全性に配慮して紹介していますが、万が一体調が悪化する場合はすぐに中止して専門医にご相談ください。
・医療機関にて適切な診断・治療を受けたうえで、セルフケアの一助となる参考情報として、ご自身の体調に応じてお役立てください。
・本サイトの記事は、医師や専門家の意見や見解であり、効果効能を保証するものでも、特定の治療法・ケア法だけを推奨するものでもありません。

出典

腰らく塾vol1_Medium.png出典:わかさ増刊号 脊柱管狭窄症克服マガジン「腰らく塾」 vol.1 2017年冬号
http://wks.jp/koshiraku001/
著者:吉原 潔

●脊柱管狭窄症をいちから知りたい方は、ぜひ下の記事をご覧ください。

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