「痛い・歩けない」で8割の狭窄症患者が悩む「間欠性跛行」|クリニック院長が解説|カラダネ

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「痛い・歩けない」で8割の狭窄症患者が悩む「間欠性跛行」|クリニック院長が解説

著者:清水整形外科クリニック院長 清水 伸一

「間欠性跛行(かんけつせいはこう)」とは、歩行中に腰から足にかけてしびれや鋭い痛み、締めつけられるような痛みが生じて一時的にそれ以上歩けなくなる歩行障害のことです。少し休めば再び歩けるものの、しばらく歩くとまたしびれや痛みが生じて、こま切れにしか歩けなくなります。腰部脊柱管狭窄症(以下、脊柱管狭窄症)になると、坐骨神経痛(痛みやしびれ)、異常知覚(足裏のジリジリ感など)に伴って間欠性跛行が現れます。

「痛み」と「しびれ」でこま切れにしか歩けなくなる間欠性跛行

間欠性跛行には、脊柱管狭窄症による神経性のものと、閉塞性動脈硬化症による血管性のものがあります。
脊柱管狭窄症と、腰痛を招くほかの病気との最大の違いは、この「間欠性跛行」があるかないかです。腰痛や坐骨神経痛とともに間欠性跛行が現れたら、まっ先に脊柱管狭窄症を疑うべきでしょう。
また、間欠性跛行が起こる原因は、歩行中に脊柱管の狭窄によって脊髄の末端に当たる馬尾や神経根、神経の血管が断続的に圧迫されるためです。
すると、神経への血流が障害され、酸素や栄養が行き渡らなくなって神経の働きが低下します。その結果、痛みやしびれが現れて足を動かせなくなるのです。少し休むと再び歩けるようになるのは、そうすることで血流障害が解消され、再び神経に酸素や栄養が行き渡って神経の働きが回復するためです。

脊柱管狭窄症で現れるのは「神経性」の間欠性跛行

一説によると、脊柱管狭窄症の患者さんの80%以上に間欠性跛行が認められるといわれており、間欠性跛行を克服することは、脊柱管狭窄症のすべての患者さんにとって最重要の課題といえるのです。

ちなみに、脊柱管狭窄症は、
①神経根型(神経根が圧迫されるタイプ)
②馬尾型(脊髄の末端の馬尾が圧迫されるタイプ)
③混合型(神経根と馬尾が圧迫されるタイプ)
の3つに大別されます。

各タイプとも圧迫される神経の部位が違うため、間欠性跛行の現れ方も異なります。神経根型の多くは片側性といって左右片側の足に症状が現れますが、馬尾型は両側性といって両足に症状が現れて歩きにくくなるのです(混合型も両側性)。これらはいずれも「神経性の間欠性跛行」と分類されます。

間欠性跛行の原因は「神経性」と「血管性」の2つにある

間欠性跛行が起こる原因は、歩行中に脊柱管の狭窄によって脊髄の末端に当たる馬尾や神経根、神経の血管が断続的に圧迫されるためです。
すると、神経への血流が障害され、酸素や栄養が行き渡らなくなって神経の働きが低下します。その結果、痛みやしびれが現れて足を動かせなくなるのです。少し休むと再び歩けるようになるのは、そうすることで血流障害が解消され、再び神経に酸素や栄養が行き渡って神経の働きが回復するためです。
この神経性の間欠性跛行のほかにもう一つ、「血管性」の間欠性跛行も存在します。血管性の間欠性跛行は、閉塞性動脈硬化症を原因としています。閉塞性動脈硬化症とは、ひと言でいえば「足に生じる血管の動脈硬化」のことで、足の血流が著しく減少します。
症状としては、足に冷えを伴う痛みやしびれが現れ、次の段階で間欠性跛行が生じます。さらに病状が進むと、足の血流が完全に途絶え、かかとやくるぶしに潰瘍ができたり、壊疽(組織の一部が死ぬこと)を招いたりして、足の切断を余儀なくされる場合も少なからずあります。

間欠性跛行のタイプによって、診療科が異なるので見極めが肝心

さらに、これらの2つの間欠性跛行の原因は、治療を受ける診療科が違うため、どちらのタイプなのかを見極めるのが重要です。神経性の場合は整形外科、血管性の場合は循環器内科、または血管外科を受診する必要があります。
まずは、上の表の「間欠性跛行のタイプの見分け方」で、自分がどのタイプなのかをチェックしてください。該当する項目の一番多いものが、自分のタイプになります。項目内のセンソリーマーチとは、時間の経過とともに症状の度合いが変化したり、症状の場所が移動・拡大したりすることを指します。
間欠性跛行が現れている人は、どのタイプなのかを把握し、適切な治療を受けてください。なお、高齢者は、神経性と血管性の両者を併発する人もいるので注意が必要です(表内の「神経性+血管性」の項目に当たる)。

生活に支障をきたす間欠性跛行で悩みを抱える人も多数

間欠性跛行がやっかいなのは、社会生活に支障が出ることです。友人とよく旅行に出かけていた人は「迷惑をかけたくない」と家に引きこもったり、「このまま歩けなくなるのではないか」と精神的に追いつめられたりする人が少なくありません。
このほかにも、例えば、横断歩道を渡る途中や駅のホームに電車が到着したときなどに間欠性跛行が生じると、車にクラクションを鳴らされたり、電車に乗り遅れたりしてしまいます。このように、間欠性跛行では、さまざまな日常での不便や障害が多くなり、これを克服することは、すべての脊柱管狭窄症の患者さんにとって、最も重要な課題であり、悲願でもあるといえます。

間欠性跛行は「脊柱管ゆるめウォーク」などで対処可能

「神経性」が原因の間欠性跛行の場合、前かがみの姿勢をとることで症状が緩和する特徴があることはすでに述べました。そこで、杖やシルバーカーを利用して、一時的に前かがみの姿勢をすることで症状を緩和する方法があります。ただし、前かがみ姿勢がクセになってしまうと、腰に大きな負担をかけてしまうため、かえって脊柱菅狭窄症を悪化させてしまうことになります。
そこで、脊柱管狭窄症を悪化させることなく、歩き方を工夫することで、間欠性跛行に対処する方法があります。間欠性跛行に最適な対処法については、脊柱管狭窄症で歩けない![重症度別]歩行力アップ法&緊急対処法で詳しく解説をしているので参考にしてください。

・記事の内容は安全性に配慮して紹介していますが、万が一体調が悪化する場合はすぐに中止して専門医にご相談ください。
・医療機関にて適切な診断・治療を受けたうえで、セルフケアの一助となる参考情報として、ご自身の体調に応じてお役立てください。
・本サイトの記事は、医師や専門家の意見や見解であり、効果効能を保証するものでも、特定の治療法・ケア法だけを推奨するものでもありません。

s_m01のコピー.jpg※記事の執筆ドクターが特定商品の購入等を推薦するものではありません。

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出典:わかさ夢ムック13 脊柱管狭窄症に絶対勝つ!新研究で続々わかった!あっと驚く自力克服道場パート2
http://wks.jp/mook013/
著者:清水伸一

●脊柱管狭窄症をいちから知りたい方は、ぜひ下の記事をご覧ください。


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