脊柱管狭窄とヘルニア、すべり症の違いを腰痛治療の世界的権威(大学前学長)が解説|カラダネ

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脊柱管狭窄とヘルニア、すべり症の違いを腰痛治療の世界的権威(大学前学長)が解説

著者:福島県立医科大学理事長 兼 学長 菊地 臣一

まずはおさらい。脊柱管狭窄とは?

椎骨には椎孔という穴があり、椎骨が上下に積み重なることによって、トンネル状の空洞ができます。
これを脊柱管といいます。

脊柱管狭窄は、腰椎(背骨の腰の部分)の内部にある脊柱管という空洞が加齢などによって、狭くなり、その中を通る神経が圧迫されている状態を示すものです。

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脊柱管狭窄と椎間板ヘルニアの違い

腰椎椎間板(ようついついかんばん)ヘルニア(以下、椎間板ヘルニア)は、椎間板の外側を覆う線維輪(せんいりん)にさけめが生じた結果、その内部にあるゼリー状の髄核(ずいかく)が外に飛び出し、神経を圧迫している状態です。

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脊柱管狭窄(せきちゆうかんきようさく)と同様、腰痛や坐骨(ざこつ)神経痛を引き起こすのが特徴です。
まれに排尿・排便障害のように重篤な症状が急速に現れる場合もあります。

椎間板ヘルニアと脊柱管狭窄を見分けるときは、立ち姿勢で前屈と後屈をしてみてください。最も発生頻度が高いのは、腰椎4番と腰椎5番の間の椎間板です。

この場合、腰を前に曲げると痛みが強まるときは椎間板ヘルニア、逆に腰を後ろに反らしたときに痛みが強くなるなら脊柱管狭窄が疑われます。
また、脊柱管狭窄では体を動かしたときに痛みが起こりやすいのに対して、椎間板ヘルニアの場合は安静にしていても痛みの出ることがときどきあります。 そのほかの見分け方では、あおむけに寝て、ひざを伸ばしたまま片足を床から30~60度上げたとき、足腰に強い痛みが生じた場合は椎間板ヘルニアの疑いが濃厚です。

脊柱管狭窄症とすべり症の関係。高齢者は側弯症にも注意

脊柱管狭窄の原因として多いのが、比較的若い人に多いすべり症です。一方、高齢者に多いのは変性側弯(そくわん)症です。

●すべり症
腰椎の椎骨どうしが前後にずれている状態を「すべり症」といいます。すべり症には2タイプあり、椎弓(ついきゆう)(椎骨の後部)と椎体(椎骨の前部)が骨折して分離した状態が「腰椎分離すべり症」です。30~40代の男性に多く、症状は下肢(かし)の痛みです。
一方、椎弓と椎体はつながっているものの、椎間板が老化などによって変性し、上下にある椎骨がずれた状態を「腰椎変性すべり症」といいます。40歳以降の女性に多く、下肢の痛みやしびれ、会陰(えいん)部症状、さらに排尿・排便障害を引き起こします。

●変性側弯症
背骨は正面から見るとまっすぐですが、加齢などによって左右に10度以上曲がった状態を変性側弯症と呼び、それに伴って腰椎の脊柱管が狭くなります。変性すべり症や変形性腰椎症を伴っている人に多く見られます。

背骨が曲がると、左右に枝分かれして出ていく神経の出口の部分が狭くなり、神経が圧迫されたり引っぱられたりすることで腰痛や下肢の痛み、しびれ、間欠(性)跛行(はこう)などの症状が現れます。
多椎間多根障害(腰椎の2ヵ所以上の椎間板で神経の圧迫があり、2つ以上の神経根が圧迫されて痛みを起こすこと)の場合や、1本の神経根が2ヵ所で圧迫されている場合も少なくないため、詳細な診察が必要になります。

・記事の内容は安全性に配慮して紹介していますが、万が一体調が悪化する場合はすぐに中止して専門医にご相談ください。
・医療機関にて適切な診断・治療を受けたうえで、セルフケアの一助となる参考情報として、ご自身の体調に応じてお役立てください。
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16年8月号.png出典:わかさ8月号 脊柱管狭窄症克服の極意 名医10人の111問111答
http://wks.jp/wakasa1608/
著者:菊地臣一

●脊柱管狭窄症をいちから知りたい方は、ぜひ下の記事をご覧ください。


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