脊柱管狭窄症の原因は全身にあり! 姿勢を正し首・胸・腰・足の4大異変を解消|カラダネ

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脊柱管狭窄症の原因は全身にあり! 姿勢を正し首・胸・腰・足の4大異変を解消

著者:清水整形外科クリニック院長 清水 伸一

腰部脊柱管狭窄症は、その病名が示すように、腰椎(背骨の腰の部分)の脊柱管に病変が現れる腰の病気です。
そのため、多くの病医院では、こうした腰の病変を正すための牽引療法や運動療法、外科手術などが、脊柱管狭窄症の治療に取り入れられています。
ただ、私は、これまでの数多くの治療経験から、腰の病変だけにアプローチするのでは脊柱管狭窄症を治すのは難しいという結論に達しました。

脊柱管狭窄症の治療では首や足の異変にも着目する

脊柱管狭窄症に悩むさまざまな患者さんの検査結果を考察したり、患者さんへの聞き取り調査を行ったりした結果、脊柱管狭窄症は腰の異変だけでなく首や胸椎(背骨の胸の部分)、足といった四つの部位の異変がかかわる、いわば「全身病」である、ということに気づいたからです。

つまり、腰の病変だけに注目するのではなく、首や胸椎、足に起こった異変も同時に正すことが、脊柱管狭窄症を改善に導くうえで非常に重要であるというわけです。

背骨のカーブが失われている人が多い

私たちの体を支える背骨は、横から見るとゆるやかにS字の弯曲を描いています。
具体的には頸椎(背骨の首の部分)と腰椎は前方へゆるやかに弯曲しており、胸椎は逆に後方へ弯曲しています。私自身はこうした背骨本来のS字カーブを「ナチュラルライン」と呼んでいます。
背骨のS字カーブは、重い頭や上半身を支えたり、跳んだりはねたりしたときに足から受けた衝撃を吸収・分散させたりする役目を担っています。そうすることで、背骨の椎骨や靭帯(骨と骨をつなぐ丈夫な線維組織)、椎間板(椎骨どうしの間でクッションの役割をしている組織)の損傷や劣化を防いでいるのです。
ところが、脊柱管狭窄症に陥っている人では、背骨を守るのに重要なS字カーブのくずれている人が非常に多く見られます。
具体的には、前弯していなければいけない頸椎は、ゆるやかなカーブが失われてまっすぐな状態になります。こうした状態は「まっすぐ頸椎(ストレートネック)」と呼ばれています。また、胸椎では後弯がさらにひどくなる「曲がり胸椎(ネコ背)」の状態に陥ります。さらに、腰椎では頸椎と同様に前弯が失われてそのまま硬直してしまう「腰椎の硬直(腰曲がり)」が起こります。

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その結果、背骨にかかる負荷や衝撃が増し、背骨の中でも特に負荷がかかりやすい腰椎に病変が生じて、脊柱管狭窄症の発症や悪化を招くのです。

前かがみ姿勢は痛みをやわらげるが、脊柱管狭窄症の元にもなる

では、なぜ背骨のS字カーブがくずれてしまうのでしょうか。
これには、加齢による筋肉や骨の衰えも大きく関係していますが、特に脊柱管狭窄症の患者さんに関していえば、前かがみ姿勢を頻繁に取ることが元凶になっているといえます。
脊柱管狭窄症の患者さんには、日ごろから前かがみ姿勢を取るのが習慣になっている人が数多く見受けられます。
前かがみ姿勢を取ると、狭まった脊柱管が広がって神経への圧迫が弱まるため、足腰の痛みやしびれなどの症状が緩和されます。そのため、整形外科医の中にも、日常生活でなるべく前かがみ姿勢を取るように患者さんにすすめる医師が数多くいます。

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ただ、前かがみ姿勢は背中や腰を丸める、いわゆる悪い姿勢でもあります。
そのため、いくららくだからといって頻繁に前かがみ姿勢を取りつづけていると背骨のS字カーブがくずれてしまい、脊柱管狭窄症の悪化を招くというわけです。
さらに、前かがみ姿勢は足の異変も招きます。
前かがみ姿勢に陥ると、上半身が前に傾いて体の重心が前方へずれます。
すると、本来は足の爪先とかかとで体重を支えなければいけないところが、爪先だけで体重を支える「爪先重心」の状態になります。爪先重心に陥ると、前かがみ姿勢が強まり、脊柱管狭窄症も悪化しやすくなります。

脊柱管狭窄症の原因となる首の異変「まっすぐ頸椎」(ストレートネック)

頸椎は、椎骨と呼ばれる小さい七つの骨が積み重なってできていて、それぞれの椎骨の間には、クッションの役割をする椎間板という軟骨があります。

頸椎を横から見ると、前方へゆるやかなカーブを描いています。実はこの弓状の弯曲があるおかげで、頸椎は5〜6キロもある重たい頭を支えることができるのです。

いわば、弯曲した頸椎が竹のようにしなって、上からかかる圧力を吸収・分散させているわけです。頭を上下左右に動かしたときに、特定の椎骨や首の筋肉に過度な負担がかからずにすむのも、頸椎が前弯しているおかげです。

頸椎のカーブ(前弯)が失われる

ところが、脊柱管狭窄症を発症して、ふだんから頻繁に前かがみ姿勢を取っていると、頸椎の前弯が徐々に失われてまっすぐになってしまいます。
こうした状態は「まっすぐ頸椎」と呼ばれています。

01_02-5_03.png前かがみ姿勢がクセになると、常に首や肩の後ろ側の筋肉が緊張した状態になります。
実際、こうした人は首や肩のひどいこりに悩まされているものです。 そして、首や肩の後ろ側の筋肉の緊張が常態化すると、ガチガチに固まった筋肉によって頸椎が後方に引っぱられるようになります。

その結果、頸椎に備わる前弯が少しずつ消え、まっすぐ頸椎に陥ってしまうというわけです。 もちろん、まっすぐ頸椎は脊柱管狭窄症の人だけが陥るわけではありません。デスクワークでのパソコン操作、車の運転、携帯メールの使用、読書、料理などで、日常的に前かがみでうつむいた姿勢を取っている人にもまっすぐ頸椎は起こります。 しかも、頸椎の前弯は非常に失われやすいこともわかっています。毎日、何時間も根をつめてパソコン作業を続ければ、2〜3週間でまっすぐ頸椎に陥ることも珍しくありません。つまり、知らぬまにまっすぐ頸椎になっている人も少なくないというわけです。

まっすぐ頸椎は首の脊柱管狭窄症(頸部脊柱管狭窄症)さえ招く

脊柱管狭窄症と聞くと腰だけに起こる病気だと思う人が多いようですが、実は、腰と同様に首にも脊柱管狭窄症は起こります。

ただ、今のところ整形外科では、頸部脊柱管狭窄症という診断名や診断基準は、正式なものとしては用いておらず、一般には、頸椎症(変形性頸椎症)の中でも、「頸椎症性神経根症」と「頸椎症性脊髄症」を併せて頸部脊柱管狭窄症と呼んでいます。 首の脊柱管狭窄症の主な症状は、首・肩・腕・手の痛みやしびれです。食事のさいに箸がうまく使えなかったり、服のボタンをかけられなかったりするなど、手や腕に不自由を感じることが多くなります。

こうした痛みやしびれは、顔を上に向けると強くなるのが特徴です。 症状は体の左右両側に出ることもあれば、片側にしか出ないこともあります。頸椎のどの部位の神経がどのように圧迫されているかで症状の現れ方が異なってくるのです。

また、重度の頭痛や肩こり、耳鳴り、めまいなどの症状が現れる場合もあります。
まっすぐ頸椎に陥って頸椎のクッション機能が失われると、頭の重量がまともに頸椎に加わります。
すると、椎骨が変形したり、椎間板(椎骨どうしの間でクッションの役割をしている組織)がはみ出たりしやすくなって、脊柱管の狭窄を招く危険も大きくなるのです。 また、上の図を見るとわかるように、まっすぐ頸椎の人では、本来なら頸椎のほぼ真上に位置する頭が前に突き出た状態になります。

こうなると、頸椎の前側に負荷がかかって、椎間板が後ろへ押し出されやすくなります。その結果、頸椎椎間板ヘルニアを起こし、頸椎症を経て、脊柱管の狭窄につながっていくのです。
首の脊柱管狭窄症については、狭窄症で首が痛い!? 若者にも多い「首の脊柱管狭窄症」とは?で解説しています。

まっすぐ頸椎は簡単に解消できる

腰の脊柱管狭窄症の発症を招く大きな原因となるばかりか、首の脊柱管狭窄症を招く元凶ともなるまっすぐ頸椎ですが、 実は私がおすすめするある方法を実践すれば、簡単に改善・解消させることができます。

そのある方法とは、自力で行う整体「水平あご引き」です。

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水平あご引きの効果はクリニックを訪れる患者さんでもすでに実証ずみです。 頸椎の前弯の回復に成功したことはレントゲンでも確認できており、実際に脊柱管狭窄症による痛みやしびれの改善効果も目の当たりにしています。

詳しくは、姿勢から改善する脊柱管狭窄症【根治】プログラム
→まっすぐ頸椎(ストレートネック)を改善する「水平あご引き」をご覧ください。

脊柱管狭窄症の原因となる胸の異変「曲がり胸椎」

前かがみ姿勢によって胸椎(背骨の胸の部分)に起こる異変を、私は「曲がり胸椎」と呼んでいます。

胸椎はもともと後方へ緩やかなカーブを描いていますが、前かがみ姿勢が定着すると、後弯が過度に強まってしまいます。これが曲がり胸椎です。背中が丸まった姿勢のことをよく「ネコ背」と表現しますが、曲がり胸椎とはまさにこのネコ背のことなのです。

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背中や肩のこりを引き起こし、脊柱管狭窄症の痛み・しびれを強める

曲がり胸椎に陥ると、背骨にかかる負荷や衝撃がうまく吸収・分散できなくなって、背骨の椎骨や靭帯(骨と骨をつなぐ丈夫な線維組織)、椎間板(椎骨どうしの間でクッションの役割をしている組織)への負担が増し、脊柱管狭窄症の悪化を引き起こすことになります。

また、曲がり胸椎は、背中や肩の筋肉、さらにはそこを通る神経にも大きな負担がかかります。そのため、曲がり胸椎に陥ると、背中や肩のこりなども起こりやすくなります。
こうしたこりは、それ自体が煩わしいだけでなく、脊柱管狭窄症による痛みやしびれを強める大きな原因にもなります。

曲がり胸椎は内臓を圧迫し、多くの不調の原因

ただ、曲がり胸椎の害はそれだけにとどまりません。
曲がり胸椎では胸椎の後弯がひどくなるぶん、肺が圧迫されて呼吸機能が低下します。
当然ながら、呼吸機能が低下すれば取り込まれる酸素は減り、全身への酸素供給量も減ります。 こうした状態は、脊柱管狭窄症の患部の酸素不足を招いて骨や神経の修復を妨げるだけではありません。
悪影響は全身に及び、肩こりや慢性疲労、肥満、集中力の低下、冷えなどを招くことになります。

また、曲がり胸椎によって弊害を受ける内臓は、肺だけではありません。胃や腸など腹部にある臓器も肺と同様に圧迫されます。胃や腸が圧迫されるとこれらの臓器を流れる血液の循環が悪くなります。

その結果、消化器としての正常な機能が果たせなくなり、消化不良や便秘を招いてしまいます。 また、女性では、曲がり胸椎によって子宮や卵巣などの臓器も圧迫されます。その結果、生理不順や生理痛も起こりやすくなります。

S字カーブを保つ簡単体操

こうした曲がり胸椎を改善させるには、ふだんから背骨のS字カーブを保つよう意識することが当然必要ですが、
それに加えて、日常的に自分でできる正しいケアの方法を身につけることも肝心です。そして、その方法として私がおすすめするのが、「スーッと背伸び」という体操です。

スーッと背伸びとは、簡単にいえば、イスに座って鼻から息を大きく吸い込みながら背すじを伸ばすという体操です。

詳しくは、姿勢から改善する脊柱管狭窄症【根治】プログラム
→背骨のS字カーブを取り戻す「スーッと背伸び」をご覧ください。

腰の異変「腰椎の硬直」と足の異変「足の爪先重心」

腰部脊柱管狭窄症の人は、足腰の痛みやしびれが軽減するために、つい前かがみの姿勢を取ってしまいがちです。
ところが、ふだんから前かがみ姿勢を取りつづけていると、今度は脊柱管狭窄症による坐骨神経痛とは別の痛みが生じてくることもあります。

前屈み姿勢が続くと腰椎の自然な湾曲が失われる

実際、私のクリニックでは脊柱管狭窄症の患者さんの多くが、殿部の痛みと張りを訴えてきます。
これは、前かがみの姿勢を取りつづけていたために、殿部や足の背面にある筋肉・靭帯(骨と骨をつなぐ丈夫な線維組織)が硬直し、そこから痛みが生じているのです。

前かがみの姿勢を取りつづけると、背骨の本来の形である自然なS字カーブがくずれて、骨盤も傾いてきます。すると、通常は前方に軽くカーブを描き上半身の重みを分散させている腰椎(背骨の腰の部分)からも弯曲が失われ、その状態で周囲の筋肉や靱帯が硬直してきます。

こうして上半身の負担が足腰に直接のしかかってくると、殿部や足の背面の筋肉から痛みが生じるばかりでなく、腰椎の脊柱管も狭まり、中を通る神経が圧迫されて坐骨神経痛を悪化させるのです。
こうした前かがみ姿勢が招く症状の対策として、私は「ひざ抱え」を患者さんたちにすすめています。

詳しくは、姿勢から改善する脊柱管狭窄症【根治】プログラム
→腰椎の硬直を和らげるには仰向けで「片ひざ抱え」をご覧ください。

前かがみ姿勢を頻繁に取っていると、本来、土ふまずのあたりにこなければならない重心が、もっと前方、具体的にいうと爪先側にずれてしまうのです。

重心が前方にずれると、足裏のアーチ(弓のような曲線)構造がくずれてしまいます。アーチには、足裏にかかる荷重を吸収・分散するためのクッションの役割と、スムーズに歩いたり走ったりするためのバネの役割があります。そのため、アーチ構造がくずれると、土ふまずの痛み(足裏筋膜炎)や、扁平足・外反母趾といった足裏の変形が起こりやすくなるのです。

なお、土ふまずの痛みなどがあると、無理が生じている部分の筋肉や靭帯(骨と骨をつなぐ線維組織)が硬直し、脊柱管狭窄症の症状が悪化します。前にきた重心を後方に戻すには、「足裏三点立ち」を心がけるとよいでしょう。

詳しくは、姿勢から改善する脊柱管狭窄症【根治】プログラム
→前傾姿勢が改善され長く歩ける「足裏三点立ち」をご覧ください。

・記事の内容は安全性に配慮して紹介していますが、万が一体調が悪化する場合はすぐに中止して専門医にご相談ください。
・医療機関にて適切な診断・治療を受けたうえで、セルフケアの一助となる参考情報として、ご自身の体調に応じてお役立てください。
・本サイトの記事は、医師や専門家の意見や見解であり、効果効能を保証するものでも、特定の治療法・ケア法だけを推奨するものでもありません。

s_0710_bishiseizaisuのコピー.jpg※記事の執筆ドクターが特定商品の購入等を推薦するものではありません。

狭窄症Part01_cover.png出典:わかさ夢ムック1 腰と首の脊柱管狭窄症に絶対勝つ!あっと驚く自力克服道場
http://wks.jp/mook001/
著者:清水伸一

●脊柱管狭窄症をいちから知りたい方は、ぜひ下の記事をご覧ください。


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