【足裏のしびれ・違和感】血流アップに役立つ「足指広げ」で改善(整形外科専門医解説)|カラダネ

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【足裏のしびれ・違和感】血流アップに役立つ「足指広げ」で改善(整形外科専門医解説)

著者:清水整形外科クリニック院長 清水伸一

腰部脊柱管狭窄症は、腰痛などの腰の問題だけではありません。近くのお尻や背中、首の痛み、さらに手足のしびれなど全身のさまざまな症状の原因ともなります。
中には、「足裏」に違和感のある方はいないでしょうか? もしかしたらそれも脊柱管狭窄症が原因かもしれません。
また、その足裏の違和感を放っておくとどんどんしびれや痛みが悪循環を起こすかもしれません。

この記事では、そんな「足裏」に焦点をしぼって、その原因やしびれ・違和感を改善する方法について、埼玉県の清水整形外科クリニック院長・清水伸一先生に解説して頂きます。

狭窄症の1/4の人に足裏の感覚異常がある

腰部脊柱管狭窄症(以下、脊柱管狭窄症)の患者さんの中には、足腰の痛みやしびれ、間欠性跛行(こま切れにしか歩けなくなる症状)に加えて、足裏のしびれや、裸足なのに厚い靴下をはいているかのような足先の違和感、マヒ、脱力に悩む人が少なくありません。
当院で調べたところ、脊柱管狭窄症の126人の患者さんのうち32人、約25%の人が足裏の不調を訴えていることがわかりました。足裏のしびれは、こうした患者さんの言葉を借りて説明すれば、以下のような違和感です。

●正座で足がしびれたときのように足裏がジリジリする

●薄皮を一枚をはったように足裏の皮膚が厚くなった感じ
●石の上を歩いているようにゴロゴロする

これが四六時中続き、特に夕方や寒い日、雨の日に症状が強くなるといいます。それだけならまだしも、足裏の感覚に異常が生じると、足部に力が入らず、まっすぐ立つのが難しくなって転倒しやすくなります。
この状態では、爪先が上がらずに垂れ下がったままになるため(下垂足という)、スリッパやサンダルがすっぽり脱げたり、小さい段差につまずいたりして転倒の危険が増大し長く歩けません。

足裏のしびれや違和感、マヒ、脱力はとてもやっかいな症状で、現時点では有効な治療法がなかなかありません。手術をしても必ずしもよくなるとはかぎらないのです。とはいえ、そのまま放置すれば、悪化する恐れが出てきます。

足裏の異常は馬尾神経の障害が主原因

そもそも、脊柱管狭窄症で足裏にしびれや違和感、マヒ、脱力が起こるのは、主に馬尾という末梢神経の束が圧迫されるためと考えられています。

脊柱管の中には、脳とつながる中枢神経である脊髄が通っています。ただし、脊髄があるのは第1腰椎あたりまでで、その先は馬のしっぽのような細い末梢神経の束からなる馬尾神経になっています。
馬尾は、お尻から太ももの後ろ側を通り、足の甲や足の裏まで延びている坐骨神経にもつながっています。

つまり、脊柱管の狭窄によって馬尾が圧迫されると、その先につながる坐骨神経に異常が生じて、足裏のしびれや違和感、マヒ、脱力が引き起こされるというわけです。

爪先重心のせいで全身がゆがむ

さらに、足裏のしびれを増悪させる隠れた重大原因があります。それは、脊柱管狭窄症の患者さんがよく取りがちな爪先重心の姿勢です。
背骨は緩やかなS字カーブを描いています。これが正常に保たれているとき、足裏にかかる重心は正しい位置を保つことができます。

ところが、脊柱管狭窄症のほとんどの患者さんは前かがみ姿勢になりがちなので、背骨のS字カーブがくずれて重心が爪先側にずれてしまっています。そのため、足裏の足指のつけ根部分に体重が集中して大きな負担がかかるのです。

001.pngその負担が長く続けば、足裏の血流が阻害され、筋肉や靭帯(骨と骨をつなぐ丈夫な線維組織)がしだいに硬直し足底筋膜炎(足裏の足底筋膜が炎症を起こし痛む病気)を引き起こします。

実際、脊柱管狭窄症の患者さんの足裏を診ると、足の指やつけ根がとても硬くなっていて、タコができている人が多く見受けられます。特に足の第2指と第3指のつけ根にタコが多発します。
足裏の血流が阻害され、筋肉や靭帯が硬直し、足裏の変形が進めば、体重をしっかり支えられません。その影響は全身に波及し、姿勢がますます悪くなって、全身のゆがみ(特に足腰の筋肉のバランスのくずれや仙腸関節のズレなど)を招いてしまいます。

こうした全身のゆがみは、脊柱管の狭窄を増長させて馬尾の圧迫を強めてしまう悪循環につながります。
脊柱管狭窄症で足裏のしびれや違和感、マヒ、脱力に悩んでいる人は、まず、足裏の血流を増やし、筋肉や靭帯の硬直をほぐすことから始めるのが解決への第一歩なのです。

「足指広げ」で足裏の硬直と血流不足を改善しよう

では、足裏の血流を増やし、筋肉や靭帯の硬直をほぐして、足裏のしびれを改善させるためにはどうしたらいいでしょうか。
まずは、前かがみの姿勢を改めるのが肝心です。姿勢正しの方法については、以下の私が解説している記事を参考にしてください。
姿勢から改善する脊柱管狭窄症【根治】プログラム

そして、足裏の血流を促し、硬直した筋肉や靭帯(骨と骨をつなぐ丈夫な線維組織)をほぐし、足裏の変形を正す必要があります。
そこで私は、脊柱管狭窄症による足裏のしびれに悩む患者さんに、「足指広げ」を指導しています。
足指広げで足裏のアーチが戻れば、足裏の痛みやしびれが和らぐのはもちろん、歩きに安定感が出てくるのです。

足指広げでは、硬直した足裏の筋肉や靭帯をほぐすために、足裏をよくプッシュオフ(押圧)を行います。プッシュオフは手の指の腹を使って足裏をジワジワとやさしく押し込んでからパッと離す簡単なマッサージです。まずは、「プッシュオフ」について、以下の記事をご覧ください。

スクリーンショット 2017-09-06 16.35.49.pngこむら返り・ふくらはぎ痛も脊柱管狭窄症が原因!?患者の6割が症状の訴え

足指広げのやり方

足指広げは、以下の5つの動作を行います。滞った血流を促して、筋肉や靱帯がほぐれるように、ゆっくりとじっくりと行います。

①まず、手の親指の腹を使って、足裏の押圧を行います。足裏の縦のアーチ(①〜⑤)をほぐしてから、横のアーチ(Ⓐ〜Ⓒ)をほぐしていきます。最後にしびれの強い部分(例えばグレーの部分が強くしびれる場合)にプッシュオフを行う。1分行います。
002.png
②次に、足指をつかみ上下に動かします。その後、足指を回して、イスに腰かけて爪先立ちとかかと上げを行います。これも1分行います。
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③今度は、まず足指の間に手指を入れて握手するように握り、前後に1分間ゆっくり動かします。
004.png
④足の指を1本1本手でつかんで広げます。ゆっくり、ジワジワと1分間行いましょう。005.png
⑤最後に、かかとの部分を握ってゆっくり上下、左右に動かして1分間ほぐします。かかと回すように動かしましょう。006.png
①〜⑤ を1セット(片足5分、両足で10分)として朝・昼・晩・風呂上がりなど(1日4セット)に行うといいでしょう。

手の指で軽く圧をかけることで血液の流れを一時的に止め、パッと離したさいに流れだす血液の勢いで、毛細血管の血流をアップさせるのが足裏のプッシュオフのねらいです。
毛細血管の血流がよくなれば、筋肉や靭帯に新鮮な酸素と栄養が行き渡って滞った老廃物が流れだし、こり固まった筋肉も靭帯も自然とほぐれてきます。足裏のプッシュオフは、強く行う必要はありません。むしろ、強く押しすぎると、防御反応が生じて痛みが悪化してしまう場合もあるので注意しましょう。

プッシュオフで足裏がほぐれたら、次に足の指をつかんで上下に動かす、足指を回す、爪先立ちとかかと上げをするなど、十分に動かします。
そうして足首から下が軟らかくなったところで、足指広げを行います。上のイラストを参考に、手の指と足の指を組んだり、足指を手指でつまんで間を広げたりして、足指を刺激します。最後に、かかともよくほぐしましょう。
足指広げを続ければ、足裏の筋肉も靭帯も柔軟になって従来のアーチが復活するだけでなく、足首やふくらはぎ、太ももの血流も改善すると考えられるので、全身の血流増加が期待できます。

そうなれば、圧迫によって血流が滞り栄養不足に陥っていた馬尾や坐骨神経も元気づくと考えられますので、ぜひ続けてみてください。

・記事の内容は安全性に配慮して紹介していますが、万が一体調が悪化する場合はすぐに中止して専門医にご相談ください。
・医療機関にて適切な診断・治療を受けたうえで、セルフケアの一助となる参考情報として、ご自身の体調に応じてお役立てください。
・本サイトの記事は、医師や専門家の意見や見解であり、効果効能を保証するものでも、特定の治療法・ケア法だけを推奨するものでもありません。

s_m01のコピー.jpg※記事の執筆ドクターが特定商品の購入等を推薦するものではありません。

出典

狭窄症Part02_cover.png

わかさ夢ムック13 脊柱管狭窄症に絶対勝つ!新研究で続々わかった!あっと驚く自力克服道場パート2
http://wks.jp/mook013/


●脊柱管狭窄症をいちから知りたい方は、ぜひ下の記事をご覧ください。


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